松山地方裁判所 昭和41年(わ)94号 判決 1970年2月18日
本籍
愛媛県新居浜市西原町三丁目甲一、三六七番地
住居
同県同市金子乙一、五九四番地の三
土木工事請負業
広田清
明治四一年一〇月二八日生
本籍
愛媛県宇摩郡土居町大字畑野一、一四〇番地
住居
同県新居浜市中村一、八三〇番地
会社員
真鍋照一
昭和四年六月一日生
右被告人両名に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官市川一出席のうえ審理し次のとおり判決する。
主文
被告人広田清を懲役六月および罰金二、〇〇〇、〇〇〇円に、被告人真鍋照一を懲役六月にそれぞれ処する。
被告人広田清において右罰金を完納することができないときは金五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から被告人広田清に対し右懲役刑の執行を、被告人真鍋照一に対し右刑の執行を各二年間猶予する。
訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人広田清は、住居地において浚渫港湾関係の土木工事請負、砂利並びに屑鉄の販売業を営んでいたものであり、被告人真鍋照一は、被告人広田清の使用人としてその会計事務を担当したものであるが、被告人両名は、被告人広田清の昭和三七年および昭和三八年の両年度分の所得税を免れんことを共謀し、被告人広田清の事業収入金を公表帳簿より除外したほか、加空経費を計上し、これらの資金を架空名義の簿外預金として隠匿する等の不正手段によりその所得を秘匿したうえ、
第一、被告人広田清の昭和三七年度分の所得金額が実際は一九、九二八、四八九円であり、これに対する所得税額は九、四三八、四四〇円であつたのにかかわらず、その所得額は四、四四一、七八八円、所得税額は一、二八二、六九〇円である旨の該年度分の虚偽の所得税確定申告書を、昭和三八年三月一五日愛媛県新居浜市所在の新居浜税務署長宛提出し、もつて詐りその他不正の行為により昭和三七年度分の所得税八、一五五、七五〇円を免れ
第二、被告人広田清の昭和三八年度分の所得金額が実際は二〇、五二二、五八五円であり、これに対する所得税額は九、七六四、九四〇円であつたのにかかわらず、その所得額は四、五〇九、七六五円、所得税額は一、三〇〇、二二〇円である旨の該年度分の虚偽の所得税確定申告書を昭和三九年三月一六日前記新居浜税務署長宛提出し、もつて詐りその他不正の行為により昭和三八年度分の所得税八、四六四、七二〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、被告人広田清の当公判廷における供述
一、被告人真鍋照一の当公判廷における供述
一、第二回公判調書中の被告人広田清および被告人真鍋照一の各供述部分
一、被告人広田清の検察官に対する昭和四一年二月二五日付(一八枚綴の分)同年三月二四日付各供述調書
一、被告人真鍋照一の検察官に対する同年二月八日付、同月九日付、同月一五日付、同月二四日付(二通)、同月二六日付、同年三月二日付(三通)、各供述調書(なお、同年二月九日付調書については同被告人作成の上申書を含む。)
一、被告人広田清の検察官に対する同年二月二五日付(一五枚綴の分)、同月二六日付名供述調書(ただし、被告人広田清の関係についてのみ)
一、第四回公判調書中の証人藤井義春の供述部分
一、第五回公判調書中の証人千葉実の供述部分
一、第六回公判調書中の証人金井考文の供述部分
一、第七回公判調書中の証人寺西直一の供述部分
一、第八回公判調書中の証人竹内照彦、同田中保雄の各供述部分
一、六車敏彦作成の上申書
一、小柳昇作成の上申書(普通預金関係分)
一、小柳昇作成の上申書(定期預金関係分)
一、寺西直一作成の確認書と題する書面
一、広田海事の賃銀台帳二冊(証九号)
一、森実陽子作成の株式会社丹友商会備付の仕入帳の写、一四葉
判示第一の事実につき
一、広田海事工業所の昭和三七年分の
(1)所得税確定申告書(証一号)
(2)総勘定元帳 (証五号)
(3)高松支店元帳 (証七号)
(4)仕分伝票一二冊 (証一〇号)
(5)領収証綴一二冊 (証一六号)
判示第二の事実につき
一、第五回公判調書中の証人斉藤岸生、同田窪平一の各供述部分
一、岸寿、白石繁春(二通)、萩尾務、岡田馬三義、上野優および大西林太郎の検察官に対する各供述調書
一、広田海事工業所の昭和三八年分
(1)所得税確定申告書(証二号)
(2)総勘定元帳 (証六号)
(3)高松支店元帳 (証八号)
(4)仕分伝票一二冊 (証一一号)
(5)領収証綴一二冊 (証一七号)
一、金星丸収入明細表 (証一二号)
(法令の適用)
被告人両名の判示各所為は、いずれも刑法六〇条、昭和四〇年三月三一日法律三三号による改正前の旧所得税法六九条一項(右法律三三号附則三五条)に該当するところ、被告人広田清につき所定刑中いずれも懲役刑および罰金刑を併科することとし、右各所為は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項によりこれを合算し、その刑期および金額の範囲内で同被告人を懲役六月および罰金二、〇〇〇、〇〇〇円に処し、被告人真鍋照一につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、右各所為は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により、重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処し、被告人広田清につき、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、被告人両名に対し、情状により同法二五条一項一号を適用してこの裁判の確定した日から二年間、被告人広田清につき右懲役刑の執行を、被告人真鍋照一につき右刑の執行を猶予することとする。
訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名に連帯して負担させることとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 加藤龍雄 裁判官 上本公康 裁判官 田村秀作)